研究概要 |
今年度の研究実績は,1 滞日日系ブラジル人の調査の学会発表,2 日系アメリカ人調査の完了とその分析,3 ブラジルにおける日系人調査の1回目の実施の3点である. 1.静岡健康・長寿学術フォーラムと日本公衆衛生学会で研究発表を行った.後者では,日系ブラジル人の日本の職場における差別体験の実態とそれが精神健康に及ぼす影響を中心に報告した.米国の先行研究では認知的差別尺度の得点が18.9±7.69であつたのに対し,本対象者では25.5±9.92とかなり高いことがわかり,多変量解析の結果,精神健康へ及ぼす影響も有意であった.さらに,職場環境では,「問題なし」と回答した者は11.3%に過ぎず,71.2%が「騒音」を上げ,41.7%が「粉塵」,28.2%が「高温」を指摘しており,不良な労働環境下で働いていることが指摘できる.また,仕事の負担感では,仕事により精神的に消耗することが「かなり」「非常に」ある者が22.4%,肉体的消耗では,34.0%が「かなり」以上強く感じており,仕事のストレスを子ども・家族にぶっけることが「ときどき」以上の頻度である者が38.4%を占め,精神的ストレスの大きさが推測された. 2.2002年夏から1年間をかけて,日系人団体等の協力を得て日系アメリカ人の調査協力者を募集し,男性223人,女性330人の調査対象者が得られた.2世(22.4%),3世(44.3%)が中心で,81.2%が他のエスニックとの混血ではなかった。また,89.3%が非喫煙者であり,ライフスタイルもアメリカ社会のものに近いといえる. 3.2003年の8月から9月中旬にかけて,ブラジルにおいて日系人調査の1回目を実施した.フィールドは,これまで日系人が少ないことから調査が行われてこなかったノルデステ地方のペルナンブッコ州レシーフェ市の市部と戦後移住者の多いボニート植民地,バイア州サルバドール市部,ジュアゼイロ移住地,ジョタカー植民地を訪問し,日系人団体を通し調査依頼とヒアリングを行った.現在の調査票の回収状況は147部である.
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