研究概要 |
今年度の実績は,以下の4点である。 1)ブラジルで追加調査を行い,最終的に201票を回収した。 2)日系アメリカ人の世代間比較について,2004年6月のHawaii International Conference on social Sciencesのreviewをパスし,Ethnic Studiesのセクションで報告する。 3)滞日日系ブラジル人の異文化適応と精神健康に関する研究報告も,同ハワイの国際学会で発表することが決まり,full paperを提出した。 4)4年間の成果をとりまとめ,報告書を作成した。 滞日ブラジル人では,異文化適応ストレス、仕事の負担、差別などの困難に直面しながらも、ブラジル人同士助け合いながら、日本社会である程度の経済基盤、生活基盤を築きつつあり、満足も見いだせている様子が伺われた。しかし、全体的には、日本人とのサポートネットワークの弱さや職種の固定は、日本社会での地位が低く、ライフチャンスも乏しく、彼からが集団的には孤立していることを示している。この点は、移民の世代が数世代にわたっている日系アメリカ人やノルデステの日系人と好対照をなしていた。日系人児童・生徒の精神的ストレス源としては、人種差別によるいじめ経験、一時的な滞在国である日本で勉強する意欲のなさ、ブラジルの学校よりはるかに規制が多く忍耐を強いられる学校風土,デカセギにきた親が仕事で忙しく、家族関係が疎遠になっており家庭や家族関係が児童生徒の心の拠り所や居場所となっていないことが指摘できた。日系アメリカ人は,世代が進むほどAmericanizeされていた。精神的健康面では,混血の日系人,4世でストレスが高かった。強制収容の影響が2世から3世,4世に影響していることも指摘された。ノルデステの日系人では,農業経営が5割を超え、全体の5割が経済的困難を抱えていた。日系3集団で最も差別体験が少ない。
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