研究概要 |
イオン線形加速器は他の加速器と比較して加速電力効率が低いことから,大出力の高周波源を必要とするため,これまで基礎研究には使用されても,ほとんど医療や産業用としては利用されてこなかった。しかしながら,本研究代表者の服部等が開発研究を進めているInterdigital-H(IH)型線形加速器では,イオンエネルギーが10MeV/u以下の領域で,他の線形加速器と比較して加速電力効率が5〜20倍以上であることが分かってきた。この特長を小型医療・産業用加速器の開発に積極的に応用可能なことに着目し,なかでも医療用放射性同位元素(RI)を生成する,小型で信頼性の高い実用機にIH型線形加速器を発展させることが本研究の目的である。 そして本研究では,東工大原子炉研が保有しているIH型線形加速器を,粒子軌道シミュレーションの結果をもとにAlternating Phase Focus(APF)構造に改造し,本補助金で購入した高周波源を用いてビーム加速試験をおこなうことにより,その加速特性について明らかにした。その成果については,平成13年度にECAART-7(欧州応用加速器国際会議)で発表した。また,医療用RI生成のため重陽子および3重陽子の加速試験は,放射線遮蔽環境の良好なルーマニア物理核工学研究所(IFIN)で実施することを計画し,平成14年度に加速空胴,イオン源,分析電磁石等を輸送した。高周波電源設備等については,IFIN保有設備の協力を受ける。そして陽子加速特性も含めて,実用機としての性能評価をおこなう予定である。
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