本研究では以下の3テーマに焦点を当て、集中的に研究した。 1)肝障害抑制物質の精製、構造決定、作用機構の解明 昨年度に引き続き、キノコから肝障害を抑制(予防)する物質の精製、構造決定、作用機構の解明を目的とし、シイタケ、マイタケ、エノキタケに強い抑制活性を見いだし、マイタケの活性物質は水溶性低分子物質であることを明らかにした。また、いくつかの香辛料に肝障害を抑制する効果を見出し、その中で極めて強い活性を示したナツメグからの肝障害抑制物質の単離・精製、構造決定を目的に実験を行った。その結果、活性画分から、いくつかの化合物を単離し、構造決定を行った。現在、単離された化合物の肝障害抑制活性を検討中である。 2)摂食抑制活性を示すヒラタケレクチンの1次構造決定と活性発現機構の解明 昨年度に引き続き、摂食抑制活性を有するヒラタケレクチン(POL)の1次構造の決定を行った。また、その遺伝子のクローニングを試み、mRNAを得、さらにcDNAライブラリーを構築した。 3)神経保護物質 ヤマブシタケにアルツハイマー病の原因と言われているアミロイド-βタンパク質による細胞毒性を抑制する活性を見いだし、活性物質の単離を試みた。アミロイド-βタンパク質による細胞毒性は大きく分けて酸化ストレスと小胞体ストレスによるものに分けられる。そのうち、酸化ストレスに対する活性物質はいくつか知られていたが、小胞体ストレスによる細胞毒性を抑制する活性はこのヤマブシタケで初めて見いだされた。
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