研究概要 |
ワタのセルロース合成酵素遺伝子GhCesA2にGFP(Green fluorescence protein)遺伝子をつなぎ、ワタ幼胚軸細胞及びタバコ培養細胞(BY-2)に導入した。市販されているアグロバクテリウム(4404)にGhCesA2を導入するとバクテリアは全て死滅するため、カルフォニア大学デービス校から、別の品種のアグロバクテリウムを4系統を入手した。これら4系統は、GhCesA2を導入しても死滅せずに成育したので、次に植物の形質転換体を作成することに着手した。 細胞レベルで、GFPによる蛍光の挙動・移動を解析したところ、形質転換のレベルが低いのか、GhCesA2遺伝子産物が不安定なのか、現在のところ、蛍光を観察するには至っていない。 セルロース合成酵素遺伝子GhCesA2の触媒ドメイン(U1、U2,、U3及びU4)を酵母(Pichia)で発現させ、リコンビナントタンパク質の大量生産を試みた。Pichia細胞の成育はやや抑えられ、大量生産には至らなかった。そのタンパク質にUDP-グルコースを与えて、グルカンの合成を試みたが、セルロースは合成されなかった。次に、GhCesA2の全長(Full length cDNA)をバキュロウィルスによって昆虫培養細胞でリコンビナントタンパク質の大量生産を試みた。昆虫培養細胞では、GhCesA2は成育を阻害することなく発現され、大量生産が可能となった。 合成酵素の結晶化にむけた大量発現系の確立を目標とした。ごく最近、酢酸菌の合成酵素遺伝子の発現を大腸菌で行ったイギリスのグループによると、菌体内に酵素がインクルージョンボディとなり、これを可溶化して結晶化に用いることはできなかった。また活性をもつタンパクも得られなかった。このような現状を踏まえて、昆虫細胞で発現させる系を試みることとし、その諸条件の検討と道具立ての準備を行った。来年度は、引き続き、昆虫細胞系で合成酵素を大量発現させる系の確立を目標とする。
|