研究概要 |
ワタのセルロース合成酵素遺伝子GhCesA2の触媒ドメイン(U1、U2,、U3及びU4)を酵母(Pichia)で発現させ、リコンビナントタンパク質の大量生産を試みた。Pichia細胞の成育はやや抑えられ、大量生産には至らなかった。そのタンパク質にUDP-グルコースを与えて、グルカンの合成を試みたが、セルロースは合成されなかった。次に、GhCesA2の全長(Full length cDNA)をバキュロウィルスによって昆虫培養細胞でリコンビナントタンパク質の大量生産を試みた。昆虫培養細胞では、GhCesA2は成育を阻害することなく発現され、大量生産が可能となった。昆虫細胞で発現された遺伝子産物を1% Titon X-100によって可溶化し、ゲル濾過及びショ糖密度勾配超遠心法によってその分子量を測定した。その結果、セルロース合成酵素(GhCesA2)は、ホモダイマー構造を取ることが明らかとなった。このことは、セロビオース単位でセルロースが合成されることを示している。 合成酵素の結晶化にむけた大量発現系の確立を試みた。セルロース合成酵素は膜タンパク質であり、精製および結晶化が困難であるため、その三次構造は解明されていない。本研究ではセルロース合成菌セルロース合成酵素触媒サブユニット(AxCesA1)にHisタグを付加したリコンビナントタンパク質を昆虫細胞に発現させた。現段階ではタンパク質の発現をSDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングにより確認したのみであるが、このリコンビナントタンパク質を大量発現させ、付加したHisタグを利用して精製できる見通しを得た。近いうちに、このタンパク質について活性を測れる場合はそれを指標に、活性が簡単には測れないがある程度の大きさがる場合は電顕観察あるいはX線小角散乱により測定できる段階になった。
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