研究課題/領域番号 |
12490020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阪上 孝 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70047166)
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研究分担者 |
小林 博行 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (00293952)
竹沢 泰子 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (70227015)
山室 信一 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10114703)
上野 成利 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (10252511)
大東 祥孝 京都大学, 留学生センター, 教授 (90169053)
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キーワード | 進化論 / ダーウィニズム / 社会生物学 / 優生学 / 利他心 / ダーウィン / 偶然性 / 人種 |
研究概要 |
ダーウィニズムの最大の特徴は、偶然性を軸に据えることで、個々の要素ではなく集合の全体を統計的に捉えようとする点にある。つまり、確率論的な思考を科学に持ち込むことによって、因果決定論的なそれまでの科学観を根底からひっくり返すような視座、不確定性原理の原型ともいうべき新しい発想を提出したということである。こうした視座は19世紀末から20世紀初頭の人文・社会科学に大きな影響を与え、たとえばゴルトンの優生学やマーシャルらによる経済学の革新をもたらすことになる。 一方、19世紀後半にはスペンサー流の社会進化論が一世を風靡することになるが、これはダーウィニズムというよりはむしろラマルキズムを拠り所とするものだった。つまり、生存闘争で生き残るべく各人は努力して進歩しなければならないということ、しかもそうした個人の自己改良の努力が幾世代にもわたって蓄積されることが種の進歩につながるということ、これがスペンサーを支えていた信念だったのである。ここにはラマルクの「前進的発達」の思想の影響が色濃く認められよう。 それゆえ一口に進化論といっても、「偶然性の科学」としてのダーウィニズムと「主体性の哲学」としてのラマルキズムとのあいだには鋭い緊張が横たわっている。研究を進めるなかで改めて浮かび上がってきたのはこの視点である。この両極は、原理的には真っ向から対立しながらも、しかし実際には相互補完的に機能することで、進化論的思考を支えつづけてきた。しかもこのことは、進化論において<種>という単位がどういうレヴェルで成立するのか、という問いともつながってくる。進化論の社会観は単純なアトミズムでもなければ単純なホーリズムでもない。その意味で<種>というレヴェルの成立をどのように基礎づけるかは進化論的思考にとって大きな問題となるだろう。来年度はこうした問題にいっそう留意しながら研究を進めてゆく予定である。
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