本研究は、危機管理においてその中核であるメタ認知能力教育システムの開発を目指して計画された。メタ認知能力とは、自分自身の今持っている意識態度そして今行なっている行動についての正しい自己評価を行なう能力、いわばセルフモニタリング能力のことである。交通安全や労災防止など、各領域にあった教材を作成するためのオーサリングツールを完成させ、危機管理のためのメタ認知能力教育を実践する支援システムの完成を本研究の目標とした。そして、研究助成の最終年度である平成15年度に、企業開発センター(株)との協力を得てシステムの完成を見た。具体的にはコンピュータに映像を撮り込み、その場面に潜在する危険源を特定し、マウスにより被験者が指摘した危険源の回答をもとにして危険予測能力の診断を可能にするというものである。同時にその映像を材料として小集団討議方法により自己の安全意識態度についての評価の妥当性について検討することができる。教材作りに当たっては各現場の意見を聞きながら、その現場特有の問題に合わせた教材を作り、個人だけではなく、その組織についての危機管理実態についてのフィードバックを行い、正しい自己評価訓練を実践するという内容である。 本研究は、分野の別、地域の別を問わず各領域、各組織で特有の問題をみずから抽出し、その現場、領域に最もあった教材を自分たちで自由に、容易に作り得るようなコンピュータをベースとしたオーサリングツールを提供して、危機管理の中枢と思われるメタ認知能力の育成を目指した。そのために、交通安全領域のほかに、電力会社での電源切り替え作業についての調査にもとづいて、本オーサリングシステムの可能性を検討した。交通安全を例に取れば、学校と企業では教材は異なってくる。また市街地と地方では事情が異なってくる。地域や組織の違いに合わせた教材作りのための援助システムの完成が待たれるところである。地方自治体の大規模災害対策への応用も適用の可能性が高く、本システムの今後の応用可能性が期待される。
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