研究課題
本年度は、与えられた波形(関数形)に(L^2(R)の意味で)できるだけ近い双直交ウェーブレットの構成方法の確立を目的として、ウェーブレットを生成するための「シンボル」の構成アルゴリズムの作成を試みた。この方法は双直交ウェーブレットの自由度をシンボルから作られる関数の展開係数の自由度に翻訳し、条件付極値問題として数値的Lagrange未定定数法に帰着させて、与えられた関数形に近い形をもつ双直交ウェーブレットを構成するものである。本年度は、この手法を数学的に定式化した後、プログラム化し、いくつかの場合について数値的に実行した。その結果、ガウス関数の2階微分のような局在化した関数に対しては、その位置やスケールを適当に調整することによって、相当程度近い関数形を持つ双直交ウェーブレットを構成することができること、またこのためには位置やスケールの調整を慎重に行なうべきことなどが分かった。また、このようなウェーブレットの応用対象として、地震波動のウェーブレット表現や、ウェーブレットによる模擬地震波動の生成方法の研究、また米国におけるウェーブレット研究の動向調査を行ない、ウェーブレットの応用研究が石油地下探査などの限られた分野から幅広い工学分野に拡大していることを確認した。さらに本計画では、年に1回程度、企業の技術者と大学の研究者をほぼ同数程度含むような構成でウェーブレット解析技術の研究会を開催し技術や研究の方向の調査を行なうことも目的としているが、本年度は11月に「応用ウェーブレット解析研究会」(2日間)を開催し、企業の技術者と大学研究者の情報交換を行なった。
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