研究概要 |
本研究では、超短時間領域のコヒーレントフォノンおよび光励起キャリアをプローブとして、半導体材料やデバイスを評価するような「テラヘルツ領域コヒーレント現象マイクロプロービング」装置の試作を目的としている。本年度は、前年度で試作した「テラヘルツ領域コヒーレント現象マイクロプロービング」装置の改良を行った。また、改良した装置を用いて,コヒーレントフォノンの伝搬・緩和ダイナミクスについて研究を行った。 マイクロ・ポンプ・プローブ装置の改良を行った結果、波長810nmのパルス光および開口比0.55の対物レンズを用いた場合、照射光のスポットサイズは約2.5μmであることがわかった。昨年度試作した装置を用いた場合のスポットサイズ(約5.5μm)と比べ約2倍ほどスポットサイズが小さく,理想的なスポットサイズ(約1.8μm)に近い値であることがわかった。また、試料上のパルス幅は100fs以下と、マクロ測定におけるパルス幅と遜色のない値に調整する事ができた。 このマイクロ・ポンプ・プローブ装置を用いて,真空蒸着法で作成したBi薄膜におけるコヒーレントフォノンの場所分布およびポンプ光強度依存性を測定した.コヒーレントフォノンの強度の場所分布を測定した結果,コヒーレントフォノンの強度の場所分布はBi薄膜中に生じている粒界の形状を反映することがわかった.ポンプ光強度依存性の測定結果から,このマイクロ・ポンプ・プローブ装置を用いてもコヒーレント非調和フォノンを観測することが可能であることを見出した. また,2種類の超格子層((GaAs)_<10> (AlAs)_<10>超格子と(GaAs)_<15> (AlAs)_5超格子)を交互に積層させた長周期半導体超格子において,コヒーレント折り返し縦音響(FLA)フォノンによるフォノン波束の伝搬ダイナミクスについて調べた。プローブ光のエネルギーを各超格子層の基礎遷移エネルギーに共鳴させることで,フォノン波束がどこの超格子層を伝搬しているのかを容易に見出すことができるという結果を得た.
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