温度・磁場誘起相転移を駆動源とする新しい高圧発生装置の開発

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12554011
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 巨海 玄道 九州大学, 理学研究院, 教授 (00111146)
• 研究分担者: 江藤 徹二郎 九州大学, 大学教育研究センター, 助手 (70322295) ; 加賀山 朋子 熊本大学, 工学部, 講師 (40274675) ; 西田 稔 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (90183540) ; 矢山 英樹 九州大学, 理学研究院, 助教授 (60166840) ; 川北 至信 九州大学, 理学研究院, 助手 (50264015)
• キーワード: マルテンサイト変態 / Ti-Ni合金 / 高圧発生装置 / 温度・磁場誘起相転移

研究概要

本研究は形状記憶合金や超磁歪合金などにおいて温度や磁場などの外部変数の変化により顕著な長さの変化がみられる物質を駆動源として用い、これまでのプレスを中心とした圧力駆動源と全く異なる新しいタイプの圧力発生装置を開発するために行われるものである。本年は大略以下のような成果を得た。
1)はじめに温度で誘起されるマルテンサイト変態時に大きな長さの変化が得られるTi-Ni形状記憶合金を用いて常圧に於ける熱膨張の測定を行った。試料(直径15mm、長さ30mm)はあらかじめ20トンの荷重をかけておき、窒素温度から測定をした。この結果逆マルテンサイト変態に伴い約1mmの長さの変化が得られた。これは割合にして3%であり、インバーなどに比べても大きいものである。
2)アンビル面が3mmのブリッジマン型高圧発生装置を使い、Biを用い、電気抵抗変化の測定を行うことにより相転移の検出を試みた。室温近辺から温度を上げるに伴い、BiI-II(25.4kbar)及びIII-V(77kbar)が観測された。即ちこの駆動源1個で100kbarまでの圧力は比較的容易に発生できることになる事が明らかとなった。さらにダイヤモンドアンビルの使用により、発生圧力は飛躍的に増加するものと期待できる。
3)しかしながら上の実験は1方向Ti-Ni合金に対してであり、繰り返して高圧発生が要求される従来型の高圧実験には不向きである。このため2方向型の素子を作製し、高圧発生実験を行った。明らかになったことは熱膨張特性が1方向Ti-Niに比べて劣るため発生圧力が1個の素子に対して30kbar程度と限られ、さらに変態温度が260K近傍と低いため、実用上の問題があった。今後よりよい特性を持つ素子の開発が必要であろう。

研究成果

• [文献書誌] G.Oomi,S.Aduma,I.Kosaka,T.Kagayama,M.Nishida: "Design of a new high pressure apparatus using shape memory alloy"Shape Memory Materials. 327-328. 39-42 (2000)
• [文献書誌] T.Kagayama,R.Kuwahara,I.Kosaka,G.Oomi,Y.Uwatoko,T.Katsura,E.Ito: "Effect of Pressure on the Invar Properties of SrRuO_3-Consolidation of SrRuO_3 at High Pressure"Science and Technology of High Pressure. 2. 692-694 (2000)
• [文献書誌] G.Oomi,T.Kagayama,S.Aduma,I.Kosaka,M.Nishida: "Application of Shape Memory Alloy to Generate High Pressure"Science and Technology of High Pressure. 2. 1085-1088 (2000)
• [文献書誌] T.Kagayama,G.Oomi,E.V.Sampathkumaran: "Effect of pressure on the Neel temperature and magnetoresistance of GdPt_2Si_2"Physica B. 284-288. 1505-1506 (2000)
• [文献書誌] G.Oomi,T.Sakai,Y.Uwatoko,K.Takanashi,H.Fujimori: "Effect of pressure on the magnetoresistance of magnetic multilayers"J.Magn.Soc.Japan. 24. 447-450 (2000)