研究概要 |
岩石中における水の粒子スケールでの分布形態を知ることは、岩石の物性、流体移動の様式や速度、流体-岩石間の化学的相互作用を知る上で基本的に重要である。完全に等方的な界面エネルギーを持ち粒子サイズの均一な単一鉱物からなる岩石での流体形状は二面角から計算できるが、現実の岩石の状態を理解するためにはより複雑な条件での流体分布について知る必要がある。ところが少しでも系が複雑になると、流体形状を計算で求めるのは困難になるため、代表的な系を選んで実験を行い、複雑さの効果を調べる方法がとられる場合が多い。今回我々は、石英岩-食塩水系の組織平衡実験(0.8GPa,900℃,2時間)を行い、SPring-8のL47XUにおいて実験産物の高分解能X線CT撮影を行った。石英岩-食塩水系では、結晶面の発達が顕著に見られる(faceting)ことがわかっており、流体の形状や連結度に対するfacetingの効果を見られる可能性がある。 得られたCT像では、直経50um程度の石英岩粒子の間隙に存在する10um以下の空隙が明瞭に結像された。流体(空隙)の分率と形状はCT像を二値化することで得られる。CT像では適切な閾値を選べばpluckingの影響の無い空隙率が得られるはずでる。閾値の不確定性を考慮してもなお、以下のような結論が得られた。1)大部分の流体が、理想形状から逸脱して平面で取り囲まれた多面体状を呈する。2)Waff & Faul(1992)が指摘したように、facetingの影響によって各流体ポケットの最小断面積は理想形状に比べて大きくなっている一方で、各ポケットは孤立しているか、または連結していても非常に細い(<1um)ため、流体分率に対する連結度・浸透率は大きく低下することが予想される。
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