研究分担者 |
二宮 利男 兵庫県警察本部, 科学捜査研究所, 参事
櫻井 吉晴 高輝度光科学研究センター, 放射光研究所, 主幹研究員
中村 智樹 九州大学, 理学部, 助手 (20260721)
寺田 靖子 東京理科大学, 理学部, 助手 (90307695)
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研究概要 |
今年度は、高エネルギー蛍光X線分析に関する基礎的データの収集を行った。着眼点として、重元素を主成分とする場合とバルク試料中に含まれる微量重元素の分析の2つの観点から評価した。まず、本分析法の検出限界(MDL)を調べるために、La,Luの各標準溶液を希釈し、検量線を作成した。検量線は0.03-10ngの範囲にわたって良い直線性を示し、定量下限は0.1ng(La),30pg(Lu)であった。この絶対量に対するMDLは14pg(La),16pg(Lu)と求められた。次に、元素が共存した状態での検討を行うため、Sm,Eu,Gd,Tbの混合溶液を用いて検量線を作成した。直線性は0.5-100ngと元素単独のものより下限が上昇する結果となったが、これは複数の元素を混合したことによりスペクトルのバックグランドが上昇したためと考えられる。 以上の結果を利用し、希土類元素の全分析への適用を目指し、希土類含有鉱物をモデル試料として蛍光X線スペクトルの測定を行った。その例として木村石(CaY_2(CO_3)_4・6H_2O)のスペクトルを測定した。必要な試料の大きさは150μmφ程度の一粒の試料で充分であり、Yと同形置換した希土類元素の存在を確認することができた。また、各々の希土類元素のピークは元素ごとに独立し、Dy,Er,Ybなどの重希土までもが容易に検出できることがわかった。 バルク試料の分析例として岩石標準試料JG-1を用いてMDLを求めたところ、Ba(3.8ppm),La(7.2ppm),Ce(3.0ppm),Nd(1.1ppm),Gd(1.1ppm),Yb(1.0ppm),W(0.1ppm)という結果が得られた。同様にNISTガラス標準試料SRM612について測定を行い、50ppmずつ含まれている希土類元素をはじめとした重元素を検出することができた。これらのことから、マトリックス中に含まれるppmレベルの微量希土類元素を非破壊で全元素分析できることがわかった。
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