研究分担者 |
二宮 利男 兵庫県警察本部, 刑事部科学捜査研究所, 所長
櫻井 吉晴 (財)高輝度光科学研究センター, 放射光研究所, 主幹研究員
中村 智樹 九州大学, 理学部, 助手 (20260721)
寺田 靖子 (財)高輝度光科学研究センター, 放射光研究所, 研究員 (90307695)
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研究概要 |
本年度は前年度までに開発した高エネルギー蛍光X線分析法を実際問題に応用して多くの成果を得た。地球科学試料では昨年度、微量重元素の希土類やWの累対構造が明らかになったガーネットについてさらに解析を進めた。Snの高エネルギー蛍光XAFSにより、微量に存在するSnは4価で6配位八面体サイトに存在することが明らかになった。イメージングの詳細な解析から、ガーネットが晶出した時、軽希土から重希土まで原子番号順に析出していることがわかった。単結晶X線構造解析を行い陽イオン-酸素原子間距離を求めたところ、これらの微量希土類元素は8配位12面体サイトのCaを置換して存在することがわかった。科学捜査への応用では日本塗料工業会発行の再塗装用塗膜試料330点について、高エネルギー蛍光X線分析による特性化を行った。Zr, Sn, Ba, Hf, Ceがその分類の指標となることがわかり異同識別法として実用化できることがわかった。研究成果は、2003年の第16回放射光学会年会合同大会で発表した(10P132「放射光蛍光X線分析による自動車塗膜試料の特性化」)。従来は微細な試料では分析が困難な対象で、本研究で開発された高エネルギー放射光蛍光X線分析で初めて可能になった手法である。本法は兵庫県科学捜査研究所所長二宮らによって、実際の難事件の鑑定にルーチンで活用されており、代表者も警視庁の依頼により本年度鑑定を行って成果を得た。本法がこのように実用化し社会に貢献している事は本研究の大きな目標が達成できたと言えよう。なお、科学的成果は平成14年度鑑識科学技術学会で二宮らによって、「A-1シンクロトロン放射光蛍光X線分析による塗膜中の成分分析(第二報)」、「A-2シンクロトロン放射光蛍光X線による鉄錆の分析」,「A-3シンクロトロン放射光蛍光X線分析によるガラスの成分分析」として発表した。
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