タキソールと似た作用で抗腫瘍性を示すディスコダーモライドは、さらに100倍程の効果の向上がみられるとされ、またタキソールに対して抵抗性を示すガンに対しても効果を現わすことがある。ディスコダーモライドは海産性稀少物質であるため有機合成することが緊急課題であった。ディスコダーモライドはポリケチド類に属する13ヶの不斉炭素を含む化合物である。その立体選択的合成にとって4つの重要なポイントがある。(1)アセテート アルドール付加体の完全な不斉合成(2)シン・アンチ プロピオネート付加体の完全な作りわけ不斉合成(3)ポリプロピオネート骨格構築における連続アルドール反応(4)アルドール反応の高度な触媒反応化(1mol%以下)。我々はキラルオキサザボロリジノン助触媒不斉アルドール反応を基盤アルドール反応とし、さらに他のアキラルなルイス酸による向山アルドール反応を併用し、ディスコダーモライドの短行程合成に挑戦した。我々の手法における成果から先に挙げた4項目のうち(1)、(2)、(3)は達成された。しかしながら(4)に関しては本質的にボランによるアルドール反応では解決できないもので、他のできることなら遷移金属を用いる不斉アルドール反応でその糸口が得られるものと期待される。特にプロピオネート ユニットを立体選択的に構築するにあたり、ユニークなアプローチが展開され、非常に有効な手法が開拓された。それはアルドール反応とラジカル脱ブロム化反応をともに用いる方法で前者反応においてプロピオネート付加体の3位の水酸基の立体化学を構築し、その後脱ブロム化し2位のメチル基の立体化学を構築しすることである。我々は13ヶの不斉導入を簡便に達成することができた。
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