研究概要 |
自然界に存在するアミノ酸は殆ど光学異性体を持ち,生体を構成するタンパクにL体が使用されることから主にL体として存在している.しかし,D体の方が多くなることもあり,光学異性体の定量は食品や飼料,医薬品等の品質管理において極めて重要である.しかし,アミノ酸の光学異性体の定量はHPLC法以外に有効な手段が無いのが現状で,特に,神経機能の動的解析に必要なリアルタイムセンサーは未だ開発されていない.本研究では,この現状を基に,アミノ酸の光学異性体センサーの実用化を研究した.申請者らは,ポリピロール膜に過酸化処理を行うと,合成時に取り込まれた陰イオン(ドーパント)の形がそのまま膜状に高精度鋳型として保持されることを報告している.この結果,光学異性体を従来に無い高い精度で認識することが可能となり,感度も優れていることも報告した.この研究ではこの様な知見を基に以下のような研究を行った. 過酸化ポリピロール膜センサーの作成と選択性評価 鋳型を有するポリピロール膜は白金やグラッシーカーボン電極上に容易に作成できた.まず,L-アスパラギン酸やグルタミン酸をドープしたポリピロール膜を作成し,過酸化により鋳型を作成した.このように作成された鋳型に対してL-アミノ酸イオンはポリマー膜を帯電することにより取り込まれた.選択性の評価として膜へのアミノ酸取り込みを電気化学的あるいはOPAアダクト形成による蛍光測定により評価した.この結果,グルタミン酸は酸性領域では膜を陰分極したとき取り込まれ,陽分極したとき排出されることが分かった.
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