研究概要 |
次世代の短波長化する光リソグラフィーに対応する最適な窓・レンズなどの硝材の開発を目的とし,新材料の設計,単結晶化を実施した.112nmという短波長に吸収端を有するLiCaAlF_6(LiCAF)に対し,3インチ大型単結晶作製を試みた.大型化にあたり,次の2点が問題となった.一つはインクルージョンの発生である.肩部での直径の広がりが急峻である,あるいは成長結晶の結晶径が急激に変化すると,そこから結晶成長が終了するまでインクルージョンが発生した.もう一つは結晶化率を大きくすると結晶底部に白濁物質が発生し,これが冷却中での結晶全域に渡るクラックの原因となることである.白濁物質を調べた結果,LiCAFとCaF_2から構成されていることがわかり,これは結晶成長中にLiFとAlF_3が蒸発し融液が組成ずれを起したことが原因となっているとわかった.そこで成長径を精密に制御し,かつ,融液組成をLiFとAlF3が過剰となるようにすることで,直径3インチのLiCAF単結晶が得られた.新材料の設計という観点からはLiCAFと同じ構造を有するコルキライト型,更にはペロブスカイト型,シーライト型,そして更なる元素の組み合わせを考えた.ここで設計に当たり硝材として必要となる以下の点に着目した.一つは短波長に吸収端が存在するよう,Caよりも小さな原子量を有する元素に着目した.そして複屈折が小さい,あるいはない,更に大型結晶作製が容易となる調和溶融組成を有する材料という観点から検討した.その結果,ペロブスカイト型を有するKMgF_3(KMF),BaLiF_3(BLF)を新材料として見いだした.これらはほぼ調和溶融しかつ立方晶に属するので理論的には複屈折が存在しない.そこでこららの結晶化を試みた結果,直径1インチの単結晶成長に成功した.次に成長結晶の透過率を測定した結果,KMF,BLFともに真空紫外域で短波長に吸収端を有することがわかった.そこでこれらの絶対透過率に近い透過率を測定するため,透過測定装置を改造し,反射率を測定することとした.反射率,透過率の両方を測定し,絶対透過率に近い値を算出したところ,F_2レーザーの波長となる157nmにおいて,LiCAFで95%,KMF,BLFでそれぞれ90%の値が得られた.複屈折率の面内分布も測定したところいずれもnmオーダーの非常に小さな分布であると判明した.
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