研究概要 |
本研究では,異種あるいは同種材料接合面に大振幅超音波を入射して,不完全接合面での透過波あるいは反射波を受信しそれらに含まれる高調波成分を検出する過程を測定対象領域について走査しながら繰返し,その結果を画像表示する非線形超音波顕微鏡の開発,及びそれを用いた金属とセラミックス,樹脂系複合材接合界面強度を非破壊的に評価することを目的とする. 本年度の研究で得られた主な知見を以下に示す. 1.疲労き裂のように,構造物表面に存在するほとんど閉じたき裂(不完全接合界面)での非線形応力ひずみ特性(不完全界面での圧縮応力波の部分的透過・引張応力の反射)を表す特殊要素を有限要素波動伝播解析プログラムに組み込み、縦波及び横波の連成する表面波の高調波発生を解析し,き裂面のクラッピング(動的繰返し打撃)により周期的に励起される2次高調波のき裂深さ依存性、き裂面の表面波伝播方向に対する傾きの依存性を明らかにした.き裂長さが表面波波長の3倍以上では高調波振幅が飽和すること,表面に45度傾斜したき裂ではクラッピングによりき裂分が片持ち梁状に振動することを明らかにした. 2.アルミニウム合金7075に疲労き裂を伝播させ,水浸表面波法により,ほとんど閉じた疲労き裂部を通過した表面波の2次高調波がき裂深さに依存してある限度まで増大することを示した.また水及び超音波センサーの非線形性を考慮して,最適高調波計測条件を求めた.この方法を用いれば,原子力発電所機器で問題になった閉口き裂の深さ評価が可能になる. 3.水中において集束型センサーを用いて大振幅超音波を固体中に励起し,超広帯域のハイドロフォンを用いて高調波を検出する方法を用い,試験片の面に並行に走査することにより,水の非線形性を抑制し,固体材料の非線形性だけを抽出し画像化することが可能になった.
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