研究概要 |
本研究では,乗用車トランスミッション用歯車の加工コストを大幅に低減するために,小型歯車の仕上げ加工用に開発実用化したねじ状工具による歯車仕上げ転造法と,超音波振動押出し加工法を組み合わせ,高強度で高精度な鉄系焼結合金歯車を高能率に生産できる複合加工システムを開発することを目的にしている.本年度は昨年度に引き続きねじ状工具を用いる軸交差式転造装置の改造と,鉄系焼結合金歯車の転造加工性実験を行った.具体的研究実績は以下の通りである. 1.昨年度は焼結合金歯車の歯すじ方向のフレキシブルなクラウニング成形を可能とするために,ねじ式転造盤の素材送り機構にXYテーブルと2台のサーボモータを組み込み,加工中の素材の送り速度と工具への押込み量の設定を電子制御により逐次行えるようにした.本年度はこの機構にさらにフィードバック制御機能を組み込み,工具押込み量の指令値と実際のテーブル移動量に誤差がある場合,それを自動補正することができるようにした.これにより昨年問題となった転造率の減少等の問題が解決され,より高精度なクラウニング加工が可能となった. 2.本年度の新たな試みとして,加工中のねじ状工具の回転角速度と素材歯車のそれを同期させ,強制駆動による転造加工も行えるよう,装置駆動部の改造を行った.その結果,平歯車を転造した場合には,転造後の歯形精度がより改善され,特に修整ねじ状工具による転造では,問題となっていたピッチ点付近の中凹歯形が完全に解消された.ただ,問題として,はすば歯車の転造では特に加工開始端において歯形が悪化するという問題があり,これは現時点では強制駆動方式による転造でも解決できなかった.今後さらなる対策を施し,一年後のシステムの完成を目指す予定である.
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