研究概要 |
本研究の目的は,乗用車トランスミッション用歯車の加工コストを大幅に低減するために,歯車の仕上げ転造法と超音波振動押出し加工法とを組み合わせ,高強度で高精度な鉄系焼結合金歯車(以後P/M歯車と呼ぶ)を高能率に生産できる複合加工システムを開発することである.ところがこれまでの研究から,超音波振動押出しは焼結材表面層の緻密化に劇的な効果は及ぼさず,仕上げ転造のみで十分な緻密化と高精度化を達成できることが分かった.また昨年度までにねじ状工具を用いるCNC軸交差式仕上げ転造盤を完成させた.そこで本年度は,上記装置とさらに2ダイスプランジ式転造盤の2種類の加工法によりP/M歯車の転造加工性実験を行い,両者の結果を比較検討した.さらに修整工具歯形の最適化を目的としてFEMによる数値歯形解析も行った.それらの結果を以下に示す. 1.CNC軸交差式転造盤を用いてねじ状工具よるP/Mはすば歯車の仕上げ転造実験を行い,これまでの平歯車同様,歯面・歯元の同時転造により歯表面層の十分な緻密化が達成され,歯形および歯すじ精度も目標値を満足する結果が得られた. 2.三次元の弾塑性有限要素法によりねじ状工具によるP/M歯車の仕上げ転造プロセスにおける数値歯形解析を行い,実験を非常に良く再現する結果が得られると同時に,数値シミュレーションにより修整工具歯形の最適化に関する基本的な指針を得られるようになった. 3.2ダイスプランジ式転造盤によるP/MローラおよびP/M歯車の仕上げ転造実験を行い,基本的な転造特性を調査した.その結果,ローラおよび歯車のいずれの加工においても素材表面層は軸交差転造の場合と同等もしくはそれ以上によく緻密化されることが分かった. 4.二次元の弾塑性有限要素法によりP/M歯車の2ダイスプランジ式転造プロセスにおける数値歯形解析を行い,実験をよく再現する結果が得られた.
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