研究概要 |
本研究は,光触媒の超親水性を利用して,気液相変化系で優れた性能を有する伝熱面の開発を目的とする. 本年度は,次の項目についての検討を行った. (1)超親水性は薄液膜からの蒸発促進に効果を発揮することが分かっているので,水平円柱周りの流下液膜式蒸発の伝熱試験を実施し,通常面との比較を行う.その際,流量と液膜厚さの関係の測定を行った. (2)プール沸騰伝熱試験により,超親水性による限界熱流束点(CHF),極小熱流束点(MHF)への影響を詳細に調べた. (3)耐久性に優れた伝熱面の開発を目指し,スパッタリング法による酸化チタンのコーティングを実施し,各種の条件に対して,紫外線の照射時間と接触角の関係を調べた. その結果,(1)については非常に低い流量でも非常に安定な薄い液膜が形成でき,通常面に比べて最大40倍程度の伝熱促進効果があることが分かった.また,最小濡れ膜流量を測定しようと試みたが,事前の予想以上に少ない液膜流量でも伝熱面全体が濡らされるため,装置上の制限から測定不可能であった. (2)については,定常プール沸騰試験および浸漬冷却実験により,濡れ性が向上すると,CHF,MHF点ともに高温高熱流束側に移動し,優れた伝熱面となり得ることが実証された. (3)のスパッタリングにより作製したコーティング膜は耐久性および伝熱特性の点では,ディップコーティングに比べて優れているものの,光触媒活性の点でまだ完全に安定な条件には達していない.しかしながら,種々の実験事実から,この方法によるコーティングが現段階では最有力であるとの感触が得られた.
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