当該研究機関の成果の概要は以下のようにまとめることができる。 (1)メカノケミカル効果を検出するための微少力センサーの研究開発 超精密研削加工法により石英ガラスを加工し、熱変形の影響をきわめて少なくすることの可能な力センサーチップの開発を行った。ベース部分には超精密加工装置により約10ミクロンの段差を設け、また弾性変形部は石英ガラス板を超精密研削加工により薄片化することで300ミクロンの薄さのチップを形成することに成功した。これらのチップに蒸着により電極を形成し微少力センサーとして機能することを確認した。理論上の分解能はおよそ5nNと推定された。さらに100ミクロンの薄さのチップによるセンサーの形成にも成功した。 (2)微少流体をハンドリングするためのマイクロフローシステムの研究開発 微少なフローセル(容積約12マイクロリットル)を開発し、またサンプル溶液を安定して供給するためのサンプルプロセッサーとの結合試験も開始した。さらに、微少なフローセルでの水面を安定化させるためのセンサーの試験も開始した。 (3)マイクロたんぱく質チップのハンドリング手法の研究開発 微少なたんぱく質チップのハンドリングを可能とするために、タングステン製の微少なピンを超精密研削加工により形成した。 (4)たんぱく質チップを装着してのリガンド相互作用試験 前記の微小力センサーにたんぱく質チップを装着し、このたんぱく質と相互作用するリガンドをマイクロフローシステムにより供給することで相互作用試験を行った。カルシウムイオンと結合する・-lactalbuminを用いた試験では、1μMの濃度のカルシウムイオンを検出する事が可能であった。また、Yeast Glucose Hexokinaseを用いた試験では、Glucoseとの反応によりシグナルを観測することが可能であったことはもちろんであるが、二糖類であるsucroseとの相互作用により異なるシグナルが得られることも確認できた。 以上によりメカノケミカル法によるバイオセンサーの性能を実用的なレベルまで引き上げることができたと考えられる。
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