研究概要 |
本研究では、現状の1.5〜1.6μm波長帯単一波長光ファイバ通信用光源を本質的に凌駕する低電流・高効率動作レーザを実現すると共に、その設計および製造法を確立することを目的として行い、以下に挙げる成果を得た。 1)以前に試作した周期240nm、幅90nmの2層細線状活性層を有する分布帰還形(DFB)レーザの室温連続寿命試験を行った結果、8,000時間以上経過後でもしきい値電流、微分量子効率および発振波長に変化の無い実用水準の良好な特性が得られた。なお、しきい値電流0.7mA、および微分量子効率23%/端面はいずれも1.5〜1.6μm波長DFBレーザの中で世界記録である。本研究で開拓した細線状活性層を有するDFBレーザは、低電流・高効率・安定単一波長動作可能なだけでなく、実用水準の信頼性も有していることを実証した。 2)光出力を片端面に集中させるために、細線状活性層の幅が90nmで構成される領域と120nmで構成される領域を結合させた共振器構造を有する分布反射型(DR)レーザを試作し、室温連続動作下において低しきい値電流(1.8mA)動作、および前端面と後端面からの光出力の比(非対称光出力比)8:1を達成した。 3)利得整合構造を導入したDRレーザの動作特性解析を行い、低電流・高効率・安定単一波長動作のための構造設計を行った。さらに、量子細線構造を導入し、量子閉じ込め効果による遷移エネルギーの増大を用いた導波路の低損失化、およびこの方法による高反射率分布反射器を用いるDRレーザを提案すると共に、その理論解析および試作を行った。しきい値電流密度320A/cm^2、非対称光出力比28:1という大きな値(DRレーザの特徴)を実現することに成功した。 4)さらに低電流動作化を推進することを目的として、層厚方向の光閉じ込めを強力に行う半導体薄膜構造の細線状活性層を有する分布帰還形(DFB)レーザを試作し、光励起下での低しきい値室温連続動作を実現した。ストライプ幅2μm、共振器長120μmのレーザにおいて、低しきい値光入力1.5mW(電流換算値27μA)、および優れた単一波長特性を実現した。
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