室温動作超小型広帯域波長可変テラヘルツパラメトリック光源の試作研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12555105
• 研究機関: 理化学研究所
• 研究代表者: 川瀬 晃道 理化学研究所, 光発生・計測研究チーム, フロンティア研究員 (00296013)
• 研究分担者: 南出 泰亜 理化学研究所, 光発生・計測研究チーム, フロンティア研究員 (10322687) ; 佐藤 篤 理化学研究所, 光発生・計測研究チーム, フロンティア研究員 (00322686) ; 今井 一宏 理化学研究所, 光発生・計測研究チーム, フロンティア研究員 (90322685)
• キーワード: テラヘルツ波 / パラメトリック / 広帯域波長可変 / 非線形光学 / THz波 / 光注入

研究概要

広帯域波長可変かつコヒーレントなTHz波光源は、物性、分子分光、生命科学、薬学、化学などの基礎分野から大気計測、ガスモニタリング、材料検査、食品検査、診断などの広範囲な応用分野への展開が期待される。
我々はTHz波パラメトリック発振器(THz-wave parametric oscillator:TPO)およびTHz波パラメトリック発生器(THz-wave parametric generator:TPG)に関する研究を進めてきた。これらは、ナノ秒パルスレーザーを光源とし、高い時間的・空間的コヒーレンシーを有する広帯域波長可変THz波光源であり、室温動作と小型・簡便性が特色である。TPOとTPGの違いは、結晶中で発生するアイドラー光(近赤外光)に対する共振器の有無である。TPGは周波数選択機構を持たないため発生するTHz波線幅は500GHz以上あり、出力もTPOよりはるかに小さかった。そのため、我々はTPOの開発を中心に進めてきたが、従来型のTPOも線幅が数十GHzあり応用範囲が限られていた。
昨年度我々はTPGに光注入を導入し、THz波の線幅が数百GHzからフーリエ限界の約100MHzへ、出力が数pJから900pJへと大幅に性能向上し、さらに120〜460μm(0.7〜2.5THz)の超広帯域波長可変性も実現した。さらに、励起用の半導体励起YAGレーザーを最適条件で試作し、TPGと組み合わせることで、室温動作の超小型テラヘルツパラメトリック光源開発に成功した。

研究成果

• [文献書誌] K.Kawase,T.Hatanaka,H.Takahashi,K.Nakamura,T.Taniuchi,and H.Ito: "Tunable THz-wave generation from DAST crystal using dual signal-wave parametric oscillation of PPLN"Optics Letters. Vol.25,No.23. 1714-1716 (2000)
• [文献書誌] Kazuhiro Imai,Kodo Kawase,Jun-ichi Shikata,Hiroaki Minamide,and Hiromasa Ito: "An injection-seeded terahertz-wave parametric oscillator"Applied Physics Letters. Vol.78 No.8. 1026-1028 (2001)
• [文献書誌] Kodo Kawase,Junichi Shikata,Hiroaki Minamide,Kazuhiro Imai,and Hiromasa Ito: "Arrayed silicon prism coupler for a THz-wave parametric oscillator"Applied Optics. Vol.40 No.12(印刷中). (2001)
• [文献書誌] Yu.H.Avetisyan,K.Kawase,and H.Ito: "Surface-emitted difference frequency generation in non-ferroelectric materials"Terahertz and Gigahertz Electronics and Photonics II,Proc.SPIE. Vol.4111. 382-390 (2000)
• [文献書誌] 川瀬晃道,伊藤弘昌: "光波からテラヘルツ波への波長変換"エレクトロニクス. Vol.45,No.9. 60-63 (2000)
• [文献書誌] 今井一宏,菅原郷史,四方潤一,川瀬晃道,南出泰亜,伊藤弘昌: "テラヘルツパラメトリック発振の光注入動作"電子情報通信学会論文誌. Vol.J84-C,No.3. 184-191 (2001)