研究概要 |
本年度は,フェージングに伴う回線状態の劣化と,ハンドオーバ等による通信の中断や回線容量の変化に対処するために,主として連続メディア再送制御方式とトラヒック制御方式とについて研究を行った. まず,連続メディアの誤りや欠落を再送により回復して高いメディア同期精度を達成できる方式としてRVTRを提案し,その有効性を実験により明らかにした.最初に,補助金により購入したデータチャネルシミュレータSX/12-2を用いてフェージングによるバースト誤りを模擬的に発生し,RVTRの基本性能を測定した. 続いて,ハンドオーバによる通信の中断に起因するパケット欠落を回復するために,RVTRの適用を考えた.特に,無線LANであるWaveLAN(2Mbps)を用いて蓄積音声・ビデオを伝送し,ハンドオーバ時のメディア同期品質を測定する実験を行った.そして,RVTRの有効性を示した.更に,ビデオの動的解像度制御を併用することによって音声の出力品質を向上できることも明らかにした. 次に,移動体通信システムとしてPHSを用いる場合について検討を行った.64kbpsベアラ対応基地局,ダイアルアップルータ及びフェージングシミュレータを用いて64kbps屋内実験システムを構築した.そして,64kbpsベストエフォートサービス(64kbpsと32kbpsとの間で回線容量が動的に切り替わる)を利用したインターネットアクセスにより蓄積音声・ビデオを転送する実験を行った.特に,回線容量変化に有効に対処するために、片道遅延時間を利用したトラヒック制御方式を提案し,その有効性を立証した. 更に,来年及び再来年度の研究の準備として、WaveLANとPHS間での垂直ハンドオーバの実験を開始した.蓄積音声・ビデオ伝送に適した垂直ハンドオーバ方式を提案し実装した.そして,提案方式と、筆者らが以前に提案したVTRメディア同期アルゴリズムとを併用することにより、提案方式だけの場合よりもメディア同期品質を向上できることを確認した.
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