研究概要 |
本年度は以下のような研究を行った. 1.自律分散アドホックネットワークにおいては,一般に,ユーザの要求やネットワーク内の端末の地理的な密度、各端末の移動速度などが多様であるため、ひとつのルーティングプロトコルが常に最適であるとは限らない.本研究では,オブジェクト指向の考えに基づき,ネットワークの状況がさまざまに変化する環境に対して動的に最適なルーティングを行う適応ルーティングプロトコルを構築した.さらに,計算機シミュレーションにより,本方式の有効性を確認した. 2.マルチホップ自律分散無線ネットワークは端末間の中継を用いて通信リンクを確立するため,通信料が安価な通信ネットワークを実現する可能性を持つが,発信端末,宛先端末以外の端末も中継のために電力を消費する.本研究では,消費電力の過半は送信消費電力であると仮定した場合におけるセルラネットワークとマルチホップネットワークの端末消費電力を比較検討した.市街エリアにおける多数の端末を想定した場合,マルチホップネットワークがセルラネットワークと比べて必ずしも消費電力が増大せず,むしろ減少する可能性があることを計算機シミュレーションにより確認した. 3.無線アドホックネットワークでは,ノードの送信電力が同一でない場合には片方向リンクが存在する.片方向リンクを利用すると,ノード間の接続性が向上する一方,ルート切断時の対応やルート再構築の問題が複雑になり,オーバーヘッド増加の恐れがある.本研究では,片方向リンクが存在する場合について,新しいルーティング方式を提案した.この方式では,双方向リンクを優先的に利用して,ルート維持を簡素化するとともに,ルート探索範囲を限定した双方向フラッディング方法を採用して,ネットワークの接続性の向上及びオーバーヘッド低減の両方を実現した.
|