研究概要 |
前年度には、(1)高い空間分解能をもった動脈壁の厚み変化のリアルタイム連続計測システムを開発し、(2)生体計測に再現性を持たせるための,計測条件統一化の予備的検討、(3)水槽実験によるリアルタイム連続計測システムの処理の詳細にわたる検討・精度評価を行った。本年度はこれらの成果を踏まえ、次の研究を行った。 ・動脈壁の弾性特性・粘性特性の算出とin vivoによる精度評価 上記で開発したリアルタイム連続計測システムを用いて,厚さ0.2mm程度の血管壁の1拍中での数μmという僅かな厚み変化を,リアルタイムで連続計測する.同時に同じ動脈で連続計測する血圧波形から,血管壁の1拍での『応力-歪み特性』を算出し、そのヒテスリシス特性から動脈壁の弾性特性・粘性特性を評価するための処理系を構築し,in vivo実験により精度評価を行った. ・動脈壁の微小な厚み変化計測の安定化 血管壁の音響インピーダンスが血液の音響インピーダンスとあまり違わない柔らかい動脈壁の場合にも,僅かな厚み変化の連続計測における精度が劣化しないように,平滑化処理を新たに導入した。 ・生体計測に再現性を持たせるための,計測条件統一化の検討 開発したリアルタイム計測システムを用いて実際に計測・評価する上で,再現性を高くするための計測条件に関する検討を改めて行った. 以上の研究によって,動脈壁運動を高精度に連続計測し、さらに、微小な厚み変化を連続計測できることを確認した。特に数ミクロンという微小な厚み変化の計測制度を実験的に確認した。さらに,リアルタイム連続計測システムによって、ニトログリセリン投与後の血管反応性の実験を行って、血管反応性が計測できることを実験的に確認した。 これらの成果は、血管反応性の新しい高精度評価システムの確立と実用化の上で重要な意味を持つものと言える。
|