研究概要 |
本研究で行われた実験結果より明らかとなったことをまとめると、以下のようになった。 ● 連続繊維シートで補強された鉄筋コンクリート部材の有限要素解析に必要な,シートの付着モデルに関しては,炭素繊維シートの付着モデルを接合要素として,有限要素プログラムに組み込み,適用性を確認した.一方,破断ひずみと表面の性状が炭素繊維と異なるポリアセタール繊維シートの場合,付着破壊の形態が異なることを実験的に明らかにした. ● 炭素繊維シートで補強された鉄筋コンクリート柱のせん断耐力を算定モデルを,非線形有限要素解析による数値実験で導出した.この算定モデルは,せん断抵抗機構に基づくもので,無補強の場合を含め,また,コンクリートとが破断する場合としない場合双方を適用範囲とするものである.なお,本算定モデルは,本研究者が既に公表している梁のモデルと異なるものである. ● 連続繊維シートで補強された鉄筋コンクリート柱の終局変形に関しては,既往の実験結果を詳細に検討した結果,力学的モデルに基づく終局変形推定モデルの構築には,ひずみなどの測定データが不足していると判断された.それゆえ,ひずみなどの詳細な測定を行うことを主目的として,連続繊維シートの補強量,帯筋の補強量,せん断余裕度などを変数とした,実験計画を立てた. ● 有限要素解析により,鉄筋コンクリート柱の終局変形(換言すれば,ピーク荷重以降の荷重-変形関係)を精度よく推定するために,圧縮側及び引張側のコンクリートの構成則を改良し,適用性を確認した.また,ひび割れでのせん断伝達モデルに改良が必要なことを実験的に明らかにした.
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