研究概要 |
本研究で行われた実験結果より明らかとなったことをまとめると、以下のようになった。 ・昨年度提案した炭素繊維シートで補強された鉄筋コンクリート柱のせん断耐力の算定モデルを用いて,炭素繊維シート比を大きくしていくと,どのようにせん断耐力が大きくなり,なぜせん断耐力が大きくなるのかを明らかにした.シート比をある程度大きくするとせん断耐力の増加の程度が鈍くなること,せん断耐力の増加の理由は,シート比が小さい間はシートが負担するせん断力の増加であり,シート比が大きくなるとシート以外の増加である. ・連続繊維シートで補強された鉄筋コンクリート柱の終局変形に関しては,シートの破断の有無に分け,推定モデルを提案した.シートの平均ひずみと柱の変形の関係,および,平均ひずみと最大ひずみとの関係をモデル化することにより,シート破断を起こすときの変形を推定する.また,シート破断を伴わない場合は,平均ひずみがある値(2%)に達したときに終局変形に達することを明らかにした. ・鋼板で補強された鉄筋コンクリート柱の終局変形に関しては,補強量が同じでも,全面補強した場合の方が,縞状に補強した場合より,終局変形性状が向上することが明らかになった. ・有限要素解析により,鉄筋コンクリート棒部材のせん断耐力を精度よく推定するために,コンクリートの圧縮軟化の構成則の改良と,せん断ひび割れと軸方向筋に沿うひび割れとを離散モデルとする必要性とがあることを明らかにした.前者は,せん断圧縮破壊,後者はせん断引張破壊の場合である.
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