研究概要 |
本研究の目的は,大規模地震時の橋梁部材の損傷やこれに伴う構造系の変化が橋梁全体系の耐震特性に与える影響を明らかにするとともに,橋梁をシステムとして捉えた考え方を耐震設計に新しく取り入れることによって,対象橋に対して合理的な耐震構造を提案することにある.兵庫県南部地震後の道路橋示方書改訂では,比較的大規模な地震に対しては橋梁構造物の機能に致命的影響を与えない程度の損傷を許容し,これを分散させることにより橋梁構造全体系の耐震性を合理的に向上させる考え方が基本となってきているが,現状ではその具体的手法を提示するには至っていない.本研究では,まず道路高架橋全体系を上部工,支承,落橋防止構造,橋脚および基礎などで構成される一連のシステムとして捉え,地震動の作用によって各部位部材の損傷が相互に影響し合い進行するメカニズムを状態遷移確率行列でモデル化し,多段階の損傷分類に対応した損傷状態確率を算出する手法を新たに提案した。そしてこれに基づいて各種耐震対策を施した場合の耐震性能向上効果についての検討を行った.次に,道路高架橋を構成する各部位部材の多段階に分類される損傷状態確率を総合した指標として部位部材の損傷度および橋梁全体系の損傷度の評価方法を新たに提案した.すなわち,部位部材の損傷度は破壊に至るまでの損傷エネルギーの観点から評価し,一方,橋梁全体系の損傷度は,機能的損失と社会的損失という2つの概念を導入した評価方法の検討を行った.さらに,それらの全体系損傷度に基づいて耐震対策を施した場合の損傷低減効果についても評価検討した.最後に,上述の考え方を基にした耐震性評価システムを試作し、パソコン上で簡易に短時間で橋梁全体系の耐震性評価結果が得られるだけでなく,グラフィカルユーザインターフェース上に表現することによって検討内容が容易に理解できるようにした.
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