研究概要 |
定着用膨張材を用いた定着法(HEM定着法)では、エポキシ樹脂定着法による疲労試験結果より、CFRPより線の疲労特性が格段に向上するという興味深い結果が得られているが、そのメカニズムは十分に解明されていない。CFRPより線を斜張橋のステーケーブルや吊り橋のメインケーブルとして使用するためには、CFRPより線の材料的な疲労特性とは何かという疑問を明らかにし、定着法によってなぜこのような差が生じるのか、そのメカニズムを究明することが本研究の目的である。また同時に、斜張橋のステーケーブルや吊り橋のメインケーブルとしての実用を目指し、定着用膨張材を用いた連続繊維緊張材マルチケーブル用大容量定着具の開発を目的としている。今年度の成果をまとめると以下のようである。 1.昨年に引き続き、φ15.2のCFRPより線をHEM定着した場合とエポキシ樹脂定着した場合で疲労試験を実施し、平均応力と応力幅の関係を調べところ、HEM定着した場合のほうが、エポキシ樹脂定着した場合よりCFRPより線の疲労性能が向上するという結果を確認した。このことは、定着部内部での相対変位振幅(応力幅、載荷速度に依存)が樹脂定着では繰り返しにともなって大きくなっており、CFRP緊張材と樹脂との摩擦熱により、70℃以上の温度上昇が見られ、CFRPより線のマトリックス樹脂の劣化が、疲労特性に影響を及ぼしているからと考えられる。 2.HEM定着では、樹脂定着と同じ荷重振幅でも定着部内部での相対変位振幅の増加は小さいため、定着部口元での温度上昇も小さく、したがって疲労特性への影響は小さいと考えられる。 3.CFRPより線(φ15.2)を12本用いたHEMマルチケーブル定着具(2,500kN級)を試作し、長期載荷試験、疲労試験の結果、実用レベルで問題ないことを確認した。
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