研究概要 |
最新のテクノロジーを利用した,新しいコンセプトによる,弾性波を用いたアクティブな地下構造探査技術の開発研究を進めた。本研究に先行する科学研究費の補助により,平成11年度に実証試験用モデルの設計と試験システムの構築(備品購入)を行い,12年度にフィールド展開の準備を進めることにしていた。 ところが平成11年度の研究の進展に伴い,フィールド展開が容易でなく,本格的な施工を要することが分かってきた。すなわちコンセプトは異なるがやはり精密制御震源を使う名古屋大学のシステムが平成10年度に,国の地震予知研究予算によって設置されたのであるが,震源と地盤の結合に問題が続出しており,データ解析は困難を極めている。 そこで我々は,費用その他での困難を覚悟のうえで,本格的なフィールド展開プロジェクトを立てて,地下深部の坑道中の良好な岩盤に完璧な定着を施すこととした。幸い,科学研究費として本研究が認められ,フィールド展開に力を注ぐことができたのである。 まずフィールドの選定を行った。大学の合同研究が行われている淡路島・野島断層(上掲),核サイクル機構・東濃地科学研究所,地震研究所・鋸山観測所,東京電力・葛野川地下発電所,同じく東京電力・神流川地下発電所(建設中)の現地調査および地質調査を行った結果,葛野川地下発電所の地下坑道が最も優れていることが判明した。そこで管理者である東京電力と協議して,試験装置の設置の承認を得た。 上掲の野島断層の教訓から,単なるコンクリート打設では全く支持力が不足することから,トンネル掘削の実績と技術力で有名な企業と,設置方法について共同研究を始め,実現のめどがたった時点で,工事を発注した。土被り500m,坑道入り口から2kmという地下深部の砂岩系基盤に定着し,試験運転を開始することができた。なお,これに伴い,次の研究も実施した。 (1)深部地下にGPS時刻信号を取り込むため,通常の水晶時計と地表のGPS受信機を組み合わせた装置を開発した。 (2)震源の回転1次モーメントを可変にする装置を設計し試作した。
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