研究課題
基盤研究(B)
我が国では多数の内陸活断層が存在し、道路、鉄道等の線状ライフライン施設はどこかでこうした活断層を横切らざるを得ない宿命にあることから、近い将来、断層変位による線状ライフライン施設の被害が生じ、これに対する対策が求められるようになると考えられる。本研究は、このような背景の下に始められたものであり、本研究の結果、以下の成果が得られた。1)過去の大地震(濃尾、北丹後、北伊豆、兵庫県南部、トルコイズミット、トルコドウセ、台湾集集、の7地震)における断層変位を整理した結果、断層沿いの各点で観測された断層変位は、Mwが7程度の地震ではほとんどの場合には3m以内であること、Mwが7.5程度の地震では70%程度の場合には3m以内であること、を確認した。また、断層直上での地震動強さを推定するために、福井地震の地震動シミュレーションおよび距離減衰式の見直しを行った。2)2000年鳥取県西部地震の際に賀祥ダムに生じた本体の変位を解析し、本体が数十cmほど変位し、貯水池の水位が急低下したことを明らかにした。この実地調査結果を数値シミュレーションし、伏在震源断層の断層運動によって震源域に地盤変位が生じ、それが原因となって、ダムの変位や貯水位の低下が生じたことを明らかにした。3)1999年トルコ・ドュツェ地震によって被災したボル高架橋を対象に、断層変位によって杭基礎で支持された橋に生じる被災メカニズムを明らかにした。この結果、杭の被害は断層変位が生じる面の上下3m程度の範囲で生じ、曲げ破壊とせん断破壊が生じることを明らかにした。4)地下免震工法によって断層変位による杭基礎の損傷を低減させる工法を提案し、その適用性を明らかにした。この結果、杭基礎周辺に発泡スチロールからなる免震層を設けることにより、杭の損傷は低減されること、フーチングを介して地盤から杭に作用する地震力に対する配慮が重要であること、杭径の数倍程度の深さまで免震層を配置しないと、免震効果が得られないことを明らかにした。5)有珠山噴火に伴う地殻変動により損傷を受けた多径間ラーメン橋を対象とし、地殻変動を断層変位と見立てた解析を行った。地殻変動を強制変位としてプッシュオーバーアナリシスにより解析した橋脚の損傷は実際の被害とよく一致し、解析手法の妥当性が検証された。
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