研究概要 |
本研究は,長大斜張橋において問題となっている斜ケーブルの風による振動を抑制できると同時に経済性を高めることができる斜ケーブルの開発を目的としている.まず,経済性を高める方法として,PE管で被覆された小径のストランドを束ねることにより,必要な容量を満たす本数のストランドで構成されたケーブルとするマルチストランドケーブルの提案を行なっている. 風によるマルチストランドケーブルの振動特性を、実ケーブルの状況に合わせるために、斜風中での二次元剛体模型を用いた風洞実験を行なった。その結果、マルチストランドケーブル模型においても円形ケーブル模型と同等の特性を示したが、マルチストランドケーブル模型の方がより不安定であった。その理由としては、ケーブル軸線に沿った流れである軸方向流が強められるためであると考えられる。 そこで、ケーブルに傾斜角を設けた場合の空力振動を抑制するために、螺旋状にストランドを巻きつけることを試み、実験を行なった。その結果、螺旋状のストランド(スパイラルストランド)を巻きつけたものは、制振効果が顕著であった。特に、マルチストランドケーブルにスパイラルストランドを巻きつけたものの制振効果は、円形ケーブルに巻きつけたものよりも格段の制振効果をもっており、ケーブルの渦励振は消せないとされていたが、渦励振をも制振するほどのものであった。これらの抑制メカニズムを明らかにするために、表面圧力測定を行った。その結果、スパイラルストランドの下にできるマルチストランドケーブルとの間のわずかの隙間による表面圧力の平滑化が制振効果を与えていることが判明した。次に、二次元模型で確認された現象が実際のケーブルに近い状態での三次元弾性模型においても、現れるか否かを検討したが、ケーブルと風との相対的な位置関係を変えると、現象がかなり変化し、その複雑性を確認した。従って、更なる現象解明のための検討が必要である。
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