研究概要 |
デジタルカメラにて岩盤斜面をフリーハンドで写真撮影し,その画像をパソコンに取り込み,当該岩盤斜面の3次元変位をリアルタイムに計測する手法の開発において,次のような研究成果を得た. 計測精度向上のために岩盤斜面に設置する標点の開発に取り組み,耐候性に優れた長期安定性を有するターゲットを完成させた.これにより,長期間継続して計測する動態観測の変位計測精度を向上させることができた. 市販のデジタルカメラはレンズ歪などの精度を劣化させる要因が大きいが,一般にはカメラの内部構造が未知なので計測前に較正作業を行い,それらパラメーターを求める作業が必要になる.本研究では,それらカメラの内部構造を未知のままで計測を行っても高精度に変位を計測できる解析codeを開発した.その結果,一般に市販されている安価なデジタルカメラを用いた低コストな計測システムの構築が可能になった.従来の写真を用いた計測方法においては,数多くの基準点の設置が必要であった.岩盤斜面は一般に基準点を設置することが困難であり,基準点設置作業に多大な労力を要していた.本研究では,基準点が無くてもリアルタイムに3次元変位計測を可能にするcode開発に取り組み,疑似逆行列の理論を利用した最小二乗法のcode化を完成させた.その結果,基準点を設置する作業なしで岩盤斜面の変位を計測する計測システムの構築を可能にした.岩盤斜面を想定した仮想モデルを構築し,デジタルカメラの画素数,撮影距離,写真枚数および撮影方法と計測精度の関係を把握する実験を行い,計測手法の確立に有用な実験データを収集した. これらの研究結果によって,実際の岩盤斜面において100mの撮影距離から,約270万画素のデジタルカメラを用いて数mm以下の精度で変位を計測することが可能になった.
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