研究概要 |
(1)沿岸海水流動モデル開発:合理的な沿岸海洋フロント計算を可能とするためのGALモデルをベースとした基本アルゴリズムを開発し,その基本性能を検証するとともに,河川プルームの塩-淡密度フロントの動的挙動シミュレーションを行った.また,研究代表者の研究室で基本アルゴリズムを開発してきているDual-σ座標系を,POM(Princeton Ocean Model)のスキームに導入するとともに,地域気象モデルの一つのRAMSを用いた海上風計算ルーチンとカプリングさせすることにより,沿岸海水流動計算法の高度化を図った.その応用として,水質汚濁が深刻になっている,フィリピン・マニラ湾の海水流動計算を行った.さらに,このモデルに,波浪推算モデルの一つであるWAMを導入するための基礎的な検討を行った.一方,サンゴ礁や,藻場,干潟といった極浅海域での海水流動計算を合理的に行うための手法として,研究代表者らが以前に開発したSDS-2DHモデルを準三次元化したSDS-Q3Dモデルを新たに開発するとともに,さらにそれに基づいて,浅水域での非平衡物質輸送モデルを開発し,それらの基本性能の検討を行った. (2)新たなネスティング手法の開発:開放性の高い海域での海水流動計算を行う際に重要な問題となる開境界処理を合理的に行うための新たな方法として,対象とする計算領域に,広域計算の結果を従来のように境界のみを通じてでなく,領域全体で合理的に反映させるための新たなネスティング方法を考案した. (3)数値モデル検証のための現地観測と室内実験:本研究で開発した沿岸海水流動モデルの検証用データを得るために,開放性の高い海域の典型例である沖縄本島西方海域を対象とした現地観測を行い,表層海水流動データをVHFレーダ観測によって取得するとともに,係留ブイによる水温・塩分の連続観測を行った.また,浅水域の藻場キャノピーに関する室内実験を行い,SDS-QSDモデルの基本検証データを得た.
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