地球温暖化の抑制、環境配慮型社会への転換は、今日の環境問題において、最も重要な課題である。脱温暖化社会、環境配慮型社会への転換を実現するためには、環境技術開発や種々の施策施策の効果評価を可能とするプラットホーム(モデル)の構築が急務である。本研究では社会経済システムにおけるエネルギー、物質消費からの二酸化炭素排出に焦点をあてモデル開発を行うことを目的として、1)ボトムアップ・エンドユーズ型モデル(化石燃料消費からの温室効果ガス排出を詳細なエネルギー機器レベルで積み上げる)、2)トップダウン型の逐時型一般均衡経済モデル(エネルギー関連部門、数十の生産・サービス部門、政府及び家計部門から構成)を組み合わせたモデルを構築し、今世紀の世界及びアジア地域の温室効果ガス排出とその抑制効果の推計を行った。モデル開発にあたっては、1)家計、産業及び政府部門の環境配慮に対する選好変化のメカニズム、2)家計への財投入とそれをインプットとする家計内サービス生産メカニズム、3)環境保全型キーテクノロジーのR&Dを含めた経済的・技術的記述、に労力を注いだ。 さらに、これらのモデルを使用し、大気二酸化炭素濃度を550ppmに安定化する施策、早期に厳しい排出抑制を行なう施策、比較的終期に抑制を強化する施策を行なうときの、各国排出量、エネルギー状況、経済影響を試算した。また、アジア地域、今世紀前半(2032年まで)を対象にボトムアップモデルを中心とした適用を行い、2032年にて対策の強弱によって、対1998年比で1.7〜4.9倍の排出量変化があることを示した。
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