研究概要 |
建築物の欠陥部検知診断法として、測定対象に振動を加えると、ひび割れや剥離などの欠陥部分は振動力学的に不連続性を生じて振動伝搬が不規則になると考え、検査対象を振動励振して、移動が容易なレーザー振動計を用いてその時の振動応答を計測する方法を考えた。すなわち、振動応答の計測結果に見られる大きな差異や不規則な変化を捉えて、欠陥部の存在を検出する方法ついて研究を進めた。 本年度は、基礎研究と位置づけて、600x300x40(単位mm)のコンクリートモルタル試験体ブロックの片側表面に、深さ10,20,30,40mmの溝を設けた模擬ひび割れ試験体と、200x300mm程度の人工剥離部を表面に持たせた模擬剥離試験体とを用いて振動計測実験を行った。その結果、以下のことが判った。 1)超音波領域も含め、振動加振は圧電ブザー素子で可能である。 2)超音波領域の振動計測にはレザー振動計が有効である。 3)振動振幅の差異によるひび割れ検知は20mm以上の深さでは、20,30kHz以上の周波数で検知可能である。 4)位相差の変化も検知診断に有効である。 5)剥離は可聴域周波数領域で検知可能である。 6)実際の建物に見られるひび割れを対象に同様な応用計測を実施した。その結果、振動応答はひび割れ前後で大きく変化し、この振動応答計測による検知診断法の有効性が確認された。 7)振動加振に用いた圧電ブザー素子に静加重を掛けて移動する加振方法を考え、おおむね有効なことが判明した。 8)既存、新設のレザー振動計を2台を用いた相対試験により移動加振法による加振力の不規則性は軽減され、問題を生じなくさせることが可能。
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