環境エネルギー問題が世界規模で深刻化する中、クリーンな光エネルギーの有効利用は最重要プロジェクトのひとつである。酸化チタンは光照射されることにより、電子・正孔対を生成する半導体であり、光エネルギーシステムとして注目を集めている。中でも有望な系のひとつに酸化チタン色素増感系などの2相系があり、この系においてエネルギーを最も効率よく利用できる材料は数十nm、すなわちメゾスコピックな孔を持つ構造体であることが理論研究により指摘された。さまざまな粒径の微粒子二次元配列構造(微粒子アレイ)の鋳型を酸化チタン半導体で得ることより、光触媒酸化還元能のあるメゾスコピツクな半導体を作製し、環境問題に取り組んで研究を行った。具体的には下記のとおりである。 1.スパレーパイロリシス法による高密度・高配列な酸化チタンメゾスコピック構造体の作成とそのパッキング密度の評価…スプレーパイロリシス法に用いるゾル濃度の調整・スプレー速度・焼成温度の制御を用い作成した構造体を電子顕微鏡で観察し、フーリエ変換じて得られるパッキング状態を評価した。 2.酸化チタンメゾスコピック構造体の光酸化還元能の検討…作成した構造体が光還元能を持つことは硝酸銀の光還元を利用して報告済みであったので、光酸化能を維持しているかどうか検討した。導電性ポリマーPyrroleを利用し酸化されて高分子化したPyrroleを電子顕微鏡で観察し分析した。 3.メソ孔に依存するサイズ選択的物質分解の検討…構造体の持つ中空球のサイズ、すなわち光酸化還元反応が起こる反応場のサイズを変化させ、反応場内の凝縮相が光酸化還元能にどう影響するかを検討した。凝縮相の分布、厚み、核酸の変化によって分解・生成される物質が異なる(メゾスコピック効果が生まれる)と考えられたので、高感度なガスクロマトグラフィーを用いて定量的な分析に当たった。 4.酸化チタン構造体への触媒金属の部位選択的担持…酸化・還元を基礎とした高効率光エネルギー変換を行うためには、酸化側でできた電子と還元側でできたホールが再結合しないようにする必要がある。そのためには、生成した電子が移動できるバンドを持つ金属を酸化チタンに担持することが有効である。真空場を利用すると金属は球形反応場の底にのみ付着することが分かっているので、酸化チタン担持金属として広く用いられるパラジウム等を球形反応場のみに担持し、酸化サイトと還元サイトが分離した材料の構築を検討した。
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