研究課題/領域番号 |
12555193
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
粉川 博之 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10133050)
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研究分担者 |
佐藤 進 川崎製鉄(株), 技術研究所, 部門長(研究職)
佐藤 裕 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00292243)
渡邊 忠雄 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40005327)
安田 功一 川崎製鉄(株), 技術研究所, 主任部員(研究職)
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キーワード | 粒界構造 / オーステナイト / 粒界腐食 / 鋭敏化 / クロム炭化物 / クロム欠乏 / 焼鈍双晶 / 加工熱処理 |
研究概要 |
優れた耐食性を示すオーステナイト系材料の大きな問題点として、溶接熱影響や高温使用時に生じる鋭敏化と呼ばれる結晶粒界腐食が挙げられる。この鋭敏化現象は、粒界へのCr炭化物析出による粒界近傍のCr欠乏が原因と考えられている。この炭化物の粒界析出や粒界近傍のCr欠乏は、粒界の原子配列構造に依存することが示唆されるが、その実験的証拠は得られていない。 そこで、鋭敏化したNi合金インコネルalloy600をFE-TEMで観察し、電子回折菊池線解析による粒界構造のキャラクタリゼーションと、EDXによる粒界近傍のCr濃度分析を詳細に行った。その結果、低エネルギー構造を持つ粒界は炭化物が析出し難くCr欠乏が小さいが、高エネルギー構造を持つ粒界は炭化物が析出し易くCr欠乏が大きい傾向が認められた。また、高エネルギー構造を持つ粒界近傍のCr濃度分布に非対称性が見られ、炭化物析出の結晶方位的特徴との間に法則を見いだした。 次に、加工熱処理によるオーステナイト系ステンレス鋼の粒界構造制御を試み、耐粒界腐食性の向上のための基礎データを集めた。具体的には、オーステナイト系ステンレス鋼母材を冷間圧延を行った後に高温熱処理し、SEMに取り付けたEBSPシステムによる結晶方位像観察法(OIM)により粒界構造分布を調べた。次にそれらの試料を種々の条件で鋭敏化処理後、EPR(電気化学的再活性化)試験と硫酸・硫酸第二鉄腐食試験により耐粒界腐食性を評価した。その結果、5%程度の低加工熱処理材中の低エネルギ-粒界存在率が最も高く、耐粒界腐食性も最も高かった。低加工熱処理による耐粒界腐食性向上の理由として、高エネルギー粒界からの焼鈍双晶発生により低エネルギー粒界部がたくさん形成され、エネルギーの低いこれら難粒界腐食部が粒界Cr炭化析出とCr欠乏の連続性を寸断し、粒界腐食の伝播を抑制するためと考えられる。
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