研究概要 |
先端型ごみ焼却プラントでは燃焼排ガスが熱交換されて利用されている。この際使用される熱交換器材料は,きわめて過酷な高温燃焼環境にさらされるため,この環境でも腐食しない高耐食性材料の開発が望まれている。この要求を満たす材料はNiをベースとした合金であると想定されるため,本研究では,Ni基合金に材料を絞り込み,この環境で最も高い耐食性を示すNi基合金の組成を明らかにすることを目的とした。平成12年度においては,純NiならびにCr含有量を変化させたNi-Cr合金を試料とし,ごみ焼却プラントの燃焼排ガス雰囲気である微量HClを含む酸素中,溶融塩付着下,1173Kでの高温腐食挙動を調査した。得られた結果をまとめると以下のとおりである。 1.純NiにおいてはNa_2SO_4-NaCl-KCl溶融塩の付着により腐食量の増加が観察された。また,Na_2SO_4-NaCl-KCl溶融塩の付着下において,雰囲気中に1000ppmのHClが含まれることにより,腐食量が増大することが認められた。 2.Ni-5mass%および10mass%Cr合金においては,1000ppmのHClを含む酸素中,Na_2SO_4-NaCl-KCl溶融塩の付着下において,純Niに比べ酸化速度の顕著な増加が認められた。溶融塩が付着しない場合には,両合金の酸化速度は低くなり,純Niと同程度の酸化速度になった。 3.Ni-20mass%Cr合金においては,1000ppmのHClを含む酸素中,Na_2SO_4-NaCl-KCl溶融塩の付着下において,純Niに比べ酸化速度が低くなった。また,スケールの剥離により試料によっては試料質量の減少が認められた。 以上の結果により,溶融塩の付着と雰囲気中の微量HClの相乗的効果は,Niの酸化を加速すること,この酸化は10mass%Crの添加でさらに促進されるが,20mass%Crの添加では抑制されることが明らかとなった。
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