研究概要 |
昨年度までの研究により,B-C-N膜は大気中500℃で1時間の熱処理を行っても安定で質量減少が生じないなど水素化DLC膜と比較して耐熱性に優れ,耐摩耗性試験でも良好な結果を示したことから,高温耐摩耗性膜として優れた性質を有することを明らかにすることができた.そこで本年度は,新たにRFプラズマCVDを導入し溶射法と組み合わせた溶射プラズマCVD法の概念を基に実際に装置の試作を行った.今年度の研究費のほとんどはこの試作に用いたものであり,まずアーク放電とグロー放電を重畳させた放電実験に成功した.それをもとにアーク放電によりチタンを溶射し,同時にメタンガスを導入しながらグロー放電させて金属と炭素系物質からなるナノ構造硬質膜の合成実験を試みた.得られた結果を要約すると以下のようである. 1)ホローカソードを用いた溶射装置及びRFプラズマCVDを行う真空装置を設計製作し,実際にアーク放電とグロー放電の重畳したプラズマを発生させた.そして圧力制御によって放電条件の異なるホローカソードによるアーク放電及び高周波によるグロー放電を重畳したアーク・グローハイブリッド放電を安定に実現する実験条件と放電特性を明らかにした. 2)溶射プラズマCVD法によりTi-DLC膜の合成を行った.合成されたTi-DLC膜は多くのドロップレットが見られるが,SEM画像及びラマン分光分析によりDLCの膜中に数百nmのTi粒子が混入されていることがわかり,合成時の圧力を低くすることでドロップレットを減少させ,ナノ構造硬質膜の合成の可能性を示唆することができた. 3)溶射プラズマCVD摸法によりCVD法と同程度の2μmの合成速度を得ることができた.
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