研究概要 |
DLC膜中にTiパーティクルを添加したTi-DLC膜の合成法として,アーク放電による溶射法とRFプラズマCVD法とを組み合わせた溶射プラズマCVD法を提案し,ホローカソードを用いた溶射装置とRFプラズマCVDを行う合成装置を設計製作した.この装置により実際にTi-DLC膜の合成実験を行い,DLC膜中へのTi添加の影響を検討した.得られた結論を以下に示す. 1.圧力制御により、放電条件の異なるアークグローハイブリッド放電を実現し,DLC膜中にTiパーティクルが分散したTi-DLC膜を合成することができた.Tiパーティクルの粒径は2〜50nmであった. 2.アーク放電のプラズマガスとして用いているAr流量を変化させることにより,膜中のTi濃度を制御することができ,それにより膜の硬さを変化させることができた. 3.Arとともに導入したホローカソードからのCH4と,メインチャンバ側面から導入したC2H2を原料ガスとして合成したTi-DLC膜は,CH4流量を変化させることにより硬さを変化させることができた.またそれにより合成可能なTi-DLC膜の膜厚も変化させることができ,膜厚6μmの厚膜合成が可能であることを明らかにした.そして,実際にTi-DLC膜の内部応力を測定することで,残留応力が1GPa程度と従来のDLC膜の2〜10GPaと比較して小さくなっていることを明らかにした.これは,Ti粒子の存在によるものと考えられる. 4.金属添加DLC膜の合成法として,約12μm/hの高速合成を達成した.以上のように,本溶射プラズマCVD法の合成技術は,厚くかつ残留応力を低減してDLC膜を合成することができることから,工具等の表面コーティングに有用であると思われる.
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