研究概要 |
高強度プレス成形用合金である5182合金を用いて、種々の圧延条件で2パスの異周速圧延を行い、焼鈍後の機械的性質と組織に及ぼす圧延条件の影響を調査した.ロール周速比の影響を調べるため,2パス圧延における圧下配分を50%-50%(全圧下率75%)とし,往復せん断圧延法により異速比を1.4〜2.0まで変化させて圧延を行った.あわせて,比較のため3パスで75%の等速圧延を行った.焼鈍材のr値は,異速比が1.4〜1.8に増加すると共に上昇し,異速比1.8では約0.9となった.また,等速圧延でも0.85と比較的高い値を示した.これは,無潤滑等速圧延では表面付近にせん断集合組織が発達するが,異周速圧延と異なり<111>軸がほぼNDと平行になることが原因と思われる.また,異速比が大きくなりすぎると,板とロールがスリップを生じ導入されるせん断ひずみが小さくなることがある.異速比2.0におけるr値の低下はこれが原因と思われる.しかし,いずれも別途行った潤滑圧延材に比べr値は大幅に上昇しており,せん断変形がr値に及ぼす効果および異速圧延の効果は確認された.つぎに,全圧下率を75%一定として圧下配分を55%-44%から40%-58%まで変化させて2パス往復せん断圧延を行った.この範囲では,圧下配分はr値に大きな影響を及ぼさなかったが,等圧下配分の場合が比較的良い値を示した.また,焼鈍材の粒径には異速比の影響が明瞭に現れ,異速比が大きくなるほど粒径は小さくなり,それに対応して強度は上昇した. 異周速圧延をアルミニウム板に適用することにより,プレス成形性の向上のみならず,延性の低下を伴わない高強度化にも成功した.このことから,異周速圧延が板材の組織制御の手段として有力なものであり,従来に手法では得られなかった組織や優れた機械的性質をもたらすものである事が分かった.
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