研究概要 |
A1050を用い,室温にて圧下率50%の1パス圧延,および2パス(50%-50%)の異周速圧延を行い,板厚全体にわたって4以上のせん断ひずみを導入することに成功した.異周速圧延材には,板厚方向全体にわたって{001}<110>,{112}<110>,{111}<110>を主成分とする集合組織が発達し,その集積度はせん断ひずみとともに上昇した.圧延材には,通常の圧延集合組織成分はまったく見られなかった.これらのせん断集合組織成分は,再結晶後も保存された. A1050合金のr値は異速比の影響をほとんど受けないが,Δr値は異速比の増加とともにわずかに低下した.r値は圧下配分の影響もわずかではあるが受け,等圧下配分の場合が高くなる傾向があった.また,2パス目の圧延方向を変化させない往復せん断圧延のほうが,2パス目の圧延方向を逆転する一方向せん断圧延よりr値が高くなった. A5182合金では,r値は,異速比が1.4〜1.8に増加すると共に上昇し,異速比1.8では約0.9となった.また,無潤滑等速圧延でも0.85と比較的高い値を示した.これは,無潤滑等速圧延では表面付近にせん断集合組織が発達するが,異周速圧延と異なり<111>軸がほぼNDと平行になることが原因と思われる.いずれも別途行った潤滑圧延材に比べr値は大幅に上昇しており,せん断変形がr値に及ぼす効果および異速圧延の効果は確認された.焼鈍材の粒径には異速比の影響が明瞭に現れ,異速比が大きくなるほど粒径は小さくなり,それに対応して強度は上昇した. 異周速圧延をアルミニウム合金板に適用することにより,プレス成形性の向上のみならず,延性の低下を伴わない高強度化にも成功した.本研究により異周速圧延が板材の組織制御の手段として有力なものであり,従来の手法では得られなかった組織や優れた機械的性質をもたらすものである事が明らかになった.
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