ステンレス鋼あるいはチタン合企を骨格にし、それら表面にプラズマ溶射によりアパタイト膜を形成し、骨の代替材料の開発を行って来たが、アパタイト被覆層と下地金属界面の接合性については長時間の使用による亀裂の発生、それに伴う孔食の発生などの危険が推定された。本年度は本件についての改善するための幾つかの方法について検討を行った。これらの溶射膜や接合度の評価のために塩化物溶液中での電気化学分極法、ヒドロキシアパタイトのキャラクタリゼイションにはDTAあるいはTMAを用い、金属/溶射膜界面のキャラクタリゼイションについてはSEM観察、EPMA分析を行った。ヒドロキシアパタイトを溶射した試料について種々の熱処理を行い、とくに界面の拡散層の形成を試み、接合性の改善について検討した。また、多孔質膜のためステンレス鋼基板では孔食発生の危険性もあり、封孔も試みた。これらの結果より、次の結論が導かれた。(1)1150℃での高温熱処理により安定なヒドロキシアパタイトコーティング層が得られた。(2)ステンレス鋼基板の孔食防止のため、基板上にチタン金属の真空蒸着膜をあらかじめコーティングしその上からヒドロキシアパタイト膜を溶射したり、その逆の処理を行ったが、顕著な改善は見られなかった。(3)ヒドロキシアパタイト溶射層とチタン基板の界面の熱拡散浸透処理を試みた。界面に接合性に優れた緻密なヒドロキシアパタイト層が形成されることがSEM観察、EPMA分析により確認された。本試料を分極実験に供したところ電流が著しく低下し、長寿命のコーティング材料が得られることが分かり、新しい手法として発展が期待された。
|