強靭な代替骨材を製作することを目的として、ハイドロキシアパタイトをプラズマ溶射法を用いて金属表面にコーティングした。溶射膜は多孔質であり、生体液が浸透しやすく、基材が腐食する可能性がある。また、プラズマ溶炎は2000℃以上と考えられ、加熱冷却時にハイドロキシアパタイトの分解や結晶構造の変化が起こり、コーティング膜と基材の密着性が問題となる。これらの問題点をクリアしながら骨代替ハイドロキシアパタイト被覆材料の開発を行った。(1)溶射原料であるハイドロキシアパタイト粉末をCa(OH)_2とH_3PO_4の直接合成で作製したが、ハイドロキシアパタイトは生成されなかった。しかし、反応後の液の熟成や熱処理によりハイドロキシアパタイトの結晶が得られることがわかった。(2)生成したハイドロキシアパタイト粉末をTi基材の上に溶射すると多孔質のコーティング膜が形成されたが、ハイドロキシアパタイトの一部あるいは全部が分解していた。しかし、」粒子径の制御により分解が避けられた。(3)ハイドロキシアパタイトの一次微細粒子を超純水で混合、乾燥し、成長させた。これを粒径47μmに粉砕し溶射した。コーティング膜を更にアルゴン中で熱処理するとハイドロキシアパタイトが得られた。(4)プラズマ溶射されたコーティング層はアモルファス状であるが、800℃、3時間空気中で焼結すると結晶化したハイドロキシアパタイト膜を得た。(5)ハイドロキシアパタイトを溶射したステンレス鋼(SUS316)、Ti(JIS2種規格)、純Ti棒の3.5%NaCl溶液中の電気化学耐食テストを行ったが、Ti基材については電流は低下し防食機能があることがわかった。(6)ハイドロキシアパタイトコーティング膜とTi基材との接合性は比較的良好であった。さらに密着性を上げる一つの方法として拡散浸透処理を試み、接合性が向上することがわかった。
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