研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、高性能電池の負極として重要である金属Liを、LiClに換えてLi_2CO_3を原料とすることにより低コストで製造するプロセスの確立にある。金属Liは溶融塩電解によって製造されるが、最大の問題は原料のLiClが高価なことである。一方、Li_2CO_3は高純度・安価かつ取り扱い容易であるが、金属Liと激しく反応するため直接に原料とすることは困難である。そこで本研究では、LiCl-KCl共晶塩の電解浴中でアノードとカソードを多孔質隔壁で仕切り、Li_2CO_3をアノードのみに供給することを試みた。これにより、カソードではLiClの電解によってリチウムを析出させる方、アノードではLi_2CO_3が炭素質電極と反応してCO_2を発生してリチウムイオンを供給する。本研究では先ず、Li_2CO_3を含まないLiCl-KCl共晶塩中におけるカソードの挙動を検討し90%以上の高い電流効率が得られることを確認した。電解温度は400℃とし、アノードには黒鉛、カソードにはタングステンを用いた。また黒鉛アノードを多孔質アルミナるつぼに入れ、その電解浴(LiCl-KCl)にLi_2CO_3を投下する方法を検討し、予期した電圧の降下を認めたがLi_2CO_3の分解は顕著ではなかった。そこで装置を改良し800℃までの実験を行った。その結果、アノードでのLi_2CO_3消費反応は強い温度依存性を示すことが明らかとなった。この反応は、塩化物からのCl_2発生の先行反応と、発生したCl_2と黒鉛電極によるCO_3^<2->が酸化されてCO_2を発生する後続反応からなり、後者が律速段階である、との結論を得た。この様に反応機構の解明が行えたことにより、実用化に向けて大きな進展が得られた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (14件)