研究概要 |
本研究は、一方向凝固酸化物共晶体(MGC料)を対象材料とし、結晶作製技術の確立、結晶の形状制御、新素材探索等を核として推進してきた。 まず、結晶作製技術の確立に関しては、当研究室独自開発のマイクロ引き下げ法(μ-PD法)に、坩堝・断熱材・hot zoneの構造などの改良を加え、2000℃域の高融点をもつY_3Al_5O_<12>(YAG,融点1930℃)などのガーネット型酸化物とAl_2O_3(sapphire,融点2050℃)との共晶体を安定的に作製する技術を確立した。 MGC材料を構造材料として用いる場合、結晶作製時にバルク体やファイバー状などに成型できることは、コスト面で大きなアドバンテージとなる。そこで坩堝先端のメニスカス部に着目し、メニスカス形状とファイバー径の間に強い相関関係が存在することを見出した。この解析結果から、坩堝形状に改良を加えた改良型μ-PD法を開発し、ロッド状、ファイバー状、リボン状などの種々の形状の共晶体結晶の作製技術を確立した。バルク結晶としては5mmφまでのロッド及び幅10mmまでの板状結晶、ファイバーとしては直径150μmφまでの細径化に成功した。 Sapphire/YAG二元系において、Bridgman法で作製した材料を上回る特性を達成したが、更なる高特性化を目指して三元共晶組成の探索を行った。その結果、sapphire/YAG/zirconia三元系において、sapphire/YAG二元系を上回る強度を示すことを見出した。この材料の高温強度特性を評価したところ、これまでに、室温(大気中)で1730MPa、1200℃(アルゴン中)で970MPaという世界最高強度値を得た。この値は、自動車等のエンジンパーツなどに要求される水準を達成しており、今後の実用化に向けた大きな前進と言える。
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