本研究は、加熱鋳型を用いた連続鋳造法OCCプロセスによる一連の新素材開発の一つと位置付け、主に銅合金系を中心とした形状記憶・超弾性一方向凝固材の製造を目的としたものである。 平成15年度の水平式OCCプロセスを用いた連続鋳造実験では、Cu-Al-Ni合金、Cu-Sn合金形状記憶・超弾性線の性質および純銅をモデルとして用いて連続鋳造条件と内部微視的組織の検討を行った。 Cu-Al-Ni超弾性線の性質について検討した結果は、ほぼ前年度と同様であり大きな進展は得られなかった。組織観察、引張り試験、疲労試験等を行った結果、やはり一方向に伸びたβ_1相中にγ_2相が点在する組織となり、TrN1合金超弾性線に比較し第一段階での超弾性変形が1/3以下の約140MPaの応力で発生した。次にCu-Sn合金線は超弾性変形応力が約160MPaとCu-Al-Ni超弾性線に比較してやや高い値を示したが、やはり低応力での変態が発生した。なお、Cu-Sn合金線の特性は曲げ変形回数に対し形状回復率の低下割合が大きく、約300回の曲げ加工後では回復率が75%まで低下してしまい実用材としては不適切であることが明らかとなった。 一方、純銅をモデルとして用いることによりOCCプロセスの鋳造特性と一方向整列組織の生成機構の検討を透過電子顕微鏡により行った結果、単結晶-一方向凝固組織-一方向整列組織の組織変化は鋳造歪みに起因することが明らかとなった。この過程は、鋳造速度が速くなることにより鋳型出口端での凝固速度と温度勾配が大きくなるため、凝固収縮と熱収縮速度が速くなり残留歪みが増大する。歪み発生が単結晶内の転位生成につながり、鋳造速度の増大に伴い導入される転位量も増大する。そして、鋳造速度がある速度より高くなると歪みの緩和が発生した。この時、結晶粒内に無秩序に存在していた転位が結晶の特定面に移動し整列することにより、転位による亜粒界を形成している。この転位粒界の生成が結晶粒内の歪みの緩和につながったものと考えられる。さらに、この転位粒界の生成が一方向凝固整列組織中に見られるストライエーション組織の形成につながったことが明らかとなった。すなわち、一方向整列組織は速い鋳造速度での鋳造歪み緩和するために生成した亜粒界組織であった。
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